ピアノは乾燥しすぎても大丈夫?冬の暖房器具の使い方と注意点

こんにちは!
ご覧いただきまして、ありがとうございます。
ピアノ調律師の吉田玲奈と申します。

ピアノは湿気に弱い楽器というのは、ご存じの方は多いかと思います。
では、乾燥はどうなんでしょうか?
今回は、ピアノの過乾燥による影響と、冬場の暖房器具の使い方についてお話したいと思います。

乾燥しすぎる状態は大丈夫?

結論から申しますと・・・
乾燥しすぎることも、ピアノにとっては良くありません。
ピアノは湿気が多すぎても、乾燥しすぎても、さまざまな不具合が起こる可能性があります。
特に、過乾燥による影響は、気づかないうちに進行していることもあるため、注意が必要です。

乾燥すると、どうなる?

ピアノには、木材やフェルトなど、湿度の影響を受けやすい材料がたくさん使われています。
乾燥すると、これらの部品が収縮するなど、さまざまな変化が起こります。
では、具体的に、どのような影響があるのでしょうか?

☆内部部品のネジの緩み

木材が乾燥して収縮すると、部品を固定しているネジが緩むことがあります。
その結果、内部から雑音が発生する原因になることがあります。

☆木材の収縮・反り・割れ

ピアノ内部には、響板という、弦の振動を受けて音を響かせる重要な部品があります。

響板は木材でできているため、乾燥すると収縮します。
その影響で、ピアノの音や調律の状態が変化することがあります。

さらに、乾燥による影響が大きくなると…
・響板にひび割れが生じる
・響板と響棒の接着が剥がれる
・駒やピン板など、弦の張力を支える重要な部品に割れが生じる
というようなトラブルにつながることも。

響板と響棒の剥がれや響板の割れは、調律の狂いや雑音の原因になることがあります。
また、駒やピン板に深刻な損傷が生じると、調律の保持が難しくなったり、大掛かりな修理が必要になったりすることもあります。

※乾燥すれば必ず割れるというわけではありません。
ピアノの状態や、乾燥の程度、期間などによって影響は、それぞれのピアノによって違います。

☆フェルトの収縮

ピアノの内部には、ハンマーやダンパーなど、さまざまなフェルトが使われています。
フェルト類も湿度の影響を受けるため、乾燥によって状態が変化し、ピアノの調整や動作に影響が出ることがあります。

例えば…
・マフラーフェルトが収縮し、効きにくいところがでてくることがある
・ダンパーフェルトが収縮し、弦の音の止まり方に影響がでることがある
・ハンマーフェルトの状態が変化し、音色に影響がでることがある

☆接着部の剥がれ

ピアノには、木材同士や、木材とフェルト・クロスなど、接着している部分がたくさんあります。
乾燥による木材、フェルト類の収縮などによって、接着部分に負担がかかり、剥がれが生じることがあります。
接着が剥がれてくると、雑音が発生することがあります。
また、部品の状態によっては、部品が外れ、音が出なくなるなど、正常に動作しなくなることもあります。

☆チューニングピンの緩み

チューニングピンは、弦を巻き付け、音の高さを保つための重要な部品です。
チューニングピンを回して弦の張力を調整することで、音の高さを変え、調律しています。
チューニングピンは、ピン板という木材に打ち込まれています。
ピン板が乾燥によって収縮すると、チューニングピンを保持する力が弱まり、ピンが緩むことがあります。
そうなると、調律をしても音の高さを保ちにくくなる場合があります。
音の高さを保てなくなると、大掛かりな修理が必要になることもあります。

過乾燥の場合、気づいた時には、深刻な状態になっていることも…

湿気が多い時は、連打がしにくかったり、鍵盤の動きが悪くなったりと、演奏中に不具合を感じることがあります。
そのため、ピアノを弾いている方が異変に気づくきっかけになる場合があります。
一方、過乾燥による不具合は、必ずしも演奏中に気づけるとは限りません。
例えば、響板にひび割れが生じていても、ピアノ自体は弾けます。
症状が目立たないうちは、ピアノを弾いている方が気づきにくいことがあります。
そして、状態によっては、修復に大きな費用がかかったり、ピアノの状態、修理費用によっては修理よりも買い替えを勧められることも。
もちろん、必ず深刻な故障が起こるというわけではありませんが、不具合に気づきにくいことがあるからこそ、日ごろから、ピアノを置いているお部屋の環境に気を配ることが大切です。

温度・湿度を一年を通して、できるだけ安定させる

ピアノを良い状態に保つためには、温度と湿度の管理が大切です。

ピアノにとって最適な温度と湿度

一般的な目安として、

温度 15~25℃
湿度 40~60%

日本では、夏と冬で温度や湿度が大きく変わります。
こうした環境の変化は、ピアノに使われている木材やフェルト類などにも影響をあたえます。
そのため、一年を通して、できる限り、温度と湿度の変化を小さくすることが大切です。

まずは、ピアノを置いているお部屋に温湿度計を設置して、普段の環境を確認してみましょう。

必要に応じて、除湿器や加湿器を使用することも方法の一つ。
ただし!
加湿器や除湿器を使えば使うほど良いというわけではありません。
過加湿、過乾燥にならないよう、温湿度計を確認しながら使用しましょう。
また、設置場所や加湿器の加湿方法にも注意し、ピアノに水滴や蒸気が直接当たらないようにしましょう。

ピアノを置いている部屋の暖房器具使用の注意点

寒い冬、ピアノの鍵盤もとっても冷たくなっていて、暖房器具なしで演奏するのは、大変ですよね。
昔、ピアノの先生に指を暖めてから、演奏しましょうと教えられたことがありますが、鍵盤が冷たかったら、一瞬で指先も凍っちゃいます。

では、ピアノのある部屋は、どのようなことに気をつけて暖房器具を使えばいいのでしょうか?

★お部屋の温度や湿度を急激に上昇させない

寒いお部屋を暖めるときは、できるだけ急激な温度・湿度の変化を避けましょう。

冷えたピアノに、暖かく湿った空気が触れると、ピアノ内部の冷たい部分で結露が起こる場合があります。
結露が起こると、内部部品や鍵盤の動きに影響が出ることがあります。

実際に、冬の時期(雪も降っていた、かなり寒い夕方だったと思います)に調律にお伺いした際、私が到着するほんの少し前に、石油ファンヒーターをつけてくださったお客様がおられました。
到着後、ピアノの外装を外してみると、チューニングピンやフレームなどに結露が生じ、水滴がついていました。
さらに、鍵盤が戻らないなど、ピアノの動きにも不具合が出ており、調律ができない状態になっていました。
急激に暖められたことが影響したと考えられます。
その後、しばらくすると鍵盤が動くようになり、調律を行うことができました。
お部屋の温度とピアノ内部の温度差が小さくなったことなどが関係したのかもしれません。
予定より時間はかかりましたが、無事に調律を終えることができました。
ただ、そのような急激な温度や湿度変化が何度も起こるような環境は、金属部品の錆ができてしまうなど、さまざまな影響が出てしまう可能性があるため、ピアノにとって良くないと思います。

そのため、寒く冷え切ったお部屋を短時間で急激に暖めるのではなく、徐々に室温を上げていくことをおすすめします。

例えば、ピアノを演奏する前から、暖房を入れておくのも方法の一つです。

エアコンを使用する場合も、最初から高い設定温度や強い風量にするのではなく、室温を確認しながら調整すると◎
ただし、設定温度を低くすれば必ず結露を防げるというわけではありません。
室内の湿度やピアノの温度など、複数の条件が関係します。
(これについては、後日違う記事で、詳しくお話ししようかと思っております。)

また、ストーブの上にヤカンを置いて加湿する方法は、ピアノの近くでは避けましょう。
火災・やけどの心配もありますし、ストーブの上にヤカンを置いておられるところも減ってきてはいるのかなと感じますが、ピアノに直接蒸気があたることや、過度な加湿による影響をピアノが受ける可能性があるからです。

★ピアノから離して使用する

ハロゲンヒーターやカーボンヒーター、電気ストーブなどは、特定の場所を集中的に暖めやすい暖房器具です。ピアノの近くで使用すると、ピアノの一部だけが暖められ、部分的な温度変化が生じることがあります。
そのため、熱源をピアノに近づけないように離して使用しましょう。
また、ファンヒーターなども、ピアノから十分に離して設置し使用することで、部屋全体をなるべく均等に暖めるイメージで使用すると良いと思います。

★ピアノに直接、温風・熱を当てない

エアコン、ファンヒーターなど、温風が出る暖房器具を使用する場合は、温風がピアノに直接当たらないようにしましょう。
エアコンであれば、風向きを調整するなどの工夫ができます。

暖房器具の種類に関わらず、ピアノだけを集中的に暖めないことが大切です。

★床暖房は注意

ピアノを置いている部屋に床暖房がある場合も、注意が必要です。
床暖房は、床面から熱が伝わるため、ピアノの底面から熱の影響を受ける可能性があります。
どうしても床暖房のある部屋にピアノを置くしかない場合は、断熱パネルをピアノの下に敷いて、ピアノへの熱の伝わり方に配慮しておく方が良いかと思います。
ただし!
断熱パネルを設置すれば、すべて影響を防げるわけではありません。
床暖房の使用によって、室内の温度や湿度が変化することもあるため、温湿度計を確認しながら、管理することが大切です。

暖房器具の種類と特徴

暖房器具には、さまざまな種類があり、それぞれ暖め方や特徴が異なります。
ピアノのあるお部屋で使用する際の参考として、主な暖房器具をまとめてみました。

暖房器具暖め方ピアノのために気をつけたいこと
エアコン温風で部屋を暖める温風を直接当てない
室温や湿度の変化に注意
石油ファンヒーター灯油を燃焼させ、温風を送る温風を直接当てない
換気や急激な室温・湿度変化に注意
ガスファンヒーターガスを燃焼させ、温風を送る温風を直接当てない
換気や急激な室温・湿度変化に注意
石油ストーブ灯油の燃焼による熱を放射する近距離での強い熱や、
燃焼による水蒸気、換気に注意
ガスストーブガスの燃焼による熱を放射する近距離での強い熱や、
燃焼による水蒸気、換気に注意
電気ストーブ
(ハロゲン・カーボン・シーズヒーターなど)
発熱体からの輻射熱など即暖性があり、
近距離でピアノを部分的に暖めないようにする
セラミックファンヒーター電気で発熱し、温風を送る温風を直接当てない
近距離でピアノを部分的に暖めない
オイルヒーター電気で内部のオイルを暖め、放熱する
じわじわ時間をかけて暖める
温風は出さないが、設置場所、
室温や湿度の変化には注意
パネルヒーターパネルからの放射熱や自然対流で暖める
じわじわ時間をかけて暖める
温風は出さないが、設置場所、
室温や湿度の変化には注意
床暖房床から熱を伝えるピアノの底面への熱の影響や、
室内の乾燥に注意

※暖房の機種によって、熱の伝わり方や特徴は異なります。

※輻射熱(ふくしゃねつ)とは、熱が赤外線などの電磁波として伝わり、物体を暖める仕組みのことです。

暖房器具は使い方次第

暖房器具の種類と特徴をまとめてみました。


調べてみると、オイルヒーターやパネルヒーターが、温風を直接吹き出さず、時間をかけてゆっくり部屋を暖めるという点で、ピアノにとって使いやすい暖房器具なのではないかと感じました。

ただし!

どの暖房器具もそれぞれ特徴があります。
暖房器具も使い方次第!

オイルヒーターやパネルヒーターであっても、室温や湿度が変化すれば、ピアノに影響を与えます。

エアコンであれば、風向きを調節してピアノに直接風が当たらないようにする。
ファンヒーターなら、ピアノから離して設置する。
電気ストーブなどは、ピアノの一部分だけを集中的に暖めないようにする。

このように、設置場所や使用方法に気を配り、それぞれの暖房器具の使い方を工夫することができます。

今回の表は、暖房器具を選ぶ際や、今お使いの暖房器具を見直す際の参考にしていただければと思います。

大切なのは…
・ピアノに直接熱や温風を当てないこと
・急激な温度・湿度変化を避けること
・温度と湿度を確認しながら管理すること

大切なピアノを長く良い状態に使っていただくために、ぜひ一度、お部屋の環境を見直してみてくださいね♪

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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